身体は季節のセンサーという認識
北海道鉄人は今年で60歳になった。あさひかわで生まれ、あさひかわで育ち、60回の冬を越してきた。その経験の中で段階的にわかってきたことがある。身体は季節を「感覚」ではなく「数値」で読んでいるということ。
たとえば秋口、外気温が12℃を下回った朝に膝の違和感が出る。これは感覚的な話ではない。北海道鉄人は過去5年分のトレーニングログと気象庁の観測データを突き合わせて確認した。スクワット時の膝の引っかかり感が出た日の平均気温は11.8℃。湿度は62%以下。再現性がある数字だった。
身体の不調を「年のせい」で片付ける人は多い。だが記録を丁寧に取っていくと、不調には環境条件のパターンがあるという気づきが生まれる。
温度・湿度・気圧——3つの閾値
北海道鉄人が自分の身体で把握している閾値を共有する。
温度
- 外気温5℃以下:ウォームアップに通常の1.5倍の時間が必要。ガレージジムの室温が10℃を切ると、バーベルのナーリングが指に痛い。冬場はストーブで15℃まで上げてから始める。
- 外気温25℃以上:セット間インターバルを30秒延長しないと心拍が戻らない。あさひかわでも夏場は30℃を超える日がある。
湿度
- 湿度40%以下:握力の低下を感じる。手の水分が抜けてグリップが滑る。チョークの使用量が増える。
- 湿度75%以上:発汗量が増え、体重の日内変動が1kg以上になる。ピーエフシーの計算で体重ベースのたんぱく質量を決めている場合、この変動は無視できない。
気圧
- 1,005hPa以下に急降下した日:頭痛ではなく、肩の可動域が狭くなる感覚がある。オーバーヘッドプレスで普段より5kg落とさないとフォームが崩れる。
- 低気圧通過後、気圧が回復した翌日:逆にコンディションが良い日が多い。記録を見返すと、自己ベスト更新の6割以上がこのパターンに該当していった。
これらは北海道鉄人個人の閾値であり、万人に当てはまるものではない。だが大事なのは「自分の閾値を知っているかどうか」という本質の部分。
記録が閾値を教えてくれる
こうした数値は、一朝一夕では見えてこない。北海道鉄人が15年以上トレーニングログを取り続けてきた中で、静かに浮かび上がってきたパターンにすぎない。
記録の方法は特別なものではない。ノートに日付・気温・湿度・気圧・種目・重量・レップ数・体感メモを書く。気象データは気象庁のサイトから翌日に転記する。これを繰り返しただけのこと。
最近は天気と体調の関係を語るアプリやサービスも増えた。それ自体は否定しない。ただ、汎用的なアルゴリズムが出す「今日は不調かも」という通知より、自分の5年分の記録から導いた「外気温12℃以下で膝に注意」のほうが精度は高いという認識。
60年この土地に住んできて思うのは、身体は環境に対して正直だということ。派手な体感の変化ではなく、バーベルを握ったときの微妙な違いに季節が現れる。それを言語化できるかどうかは、記録の蓄積にかかっている。
段階的に、丁寧に、記録を重ねていく。身体が季節を読む精度は、そうやって上がっていくものだと北海道鉄人は考えている。
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