あっ、つめたい!
ある日の放課後、ランドセルをどすんとおろしてから、ベランダの水道をひねった。
じゃーって出てきた水が、手のひらにのっかった瞬間、全身がぴーんってなった。
「つめたっ!!」
思わず声が出た。でもやめられなかった。
もう一回、もう一回、手をくぐらせるたびに、なんか、胸のあたりがすっきりした。
学校から帰ってきたときのぎゅーってした感じが、水にさわるとするするとけていく。
あれってなんだろう。不思議。
—
水はかたちがないのに、ぜんぶのかたちになる
生活科で育てているアサガオに水やりをするとき、じょうろの先から水がすいーって出てくるのをじっと見てしまう。
ふわっと広がって、土にしみていって、においが変わる。
雨のにおいとちょっとにてる気がする。
水ってふしぎ。
コップに入れたらコップのかたち。
手のひらにのせたら手のひらのかたち。
でもつかもうとすると、するって逃げていっちゃう。
保育園のとき、プール遊びで水を両手でいっぱい集めようとして、何回やってもこぼれちゃって「んー!!」ってなってた。
でも今は、こぼれてもなんかおかしくてちょっと笑えるようになった。
水はつかまらないものなんだって、手が知ってる。
—
豊平川の石の下にいたやつ
夏休みに入る前、パパと豊平川の浅いところへ行った。
石をひっくり返したら、うにうにした小さな虫みたいなのがいた。
「おっ!!」
パパが「カゲロウの赤ちゃんかもな」って教えてくれた。
その子、川の流れに足を踏ん張って、ちゃんとそこにいた。
水がこんなに速く流れてるのに、飛ばされないで、ずっとそこにいた。
わたしは足だけ水に入れてたんだけど、冷たくて、底の石がごろごろしてて、でも水がさわさわ流れるのが足に当たって、なんか体が川の一部みたいになったきがした。
ひんやりって、気持ちいい。
怖いとか嫌とかじゃなくて、「あ、生きてる」ってかんじ?
うまく言えないけど、足が知ってる。
—
雪どけの水たまりと、長靴の重さ
札幌の春は、水たまりがたくさんできる。
学校の帰り道、長靴でざっぶーんって入ると「ぱしゃあん!!」て音がして、最高だった。
二回、三回、もっかい!ってなる。
でも一回、入りすぎて長靴の中まで水が入ってきて、ずんずんずんって歩くたびに靴下がびしょびしょで、それは「んー!!」だった。
ママに「靴下出して」って言われながら、でも心の中ではまたやりたいな、ってちょっと思ってた。
水たまりの水って、川の水より少しぬるい。
それにちょっとにごってる。
でも音がいちばん大きくてたのしい。
水はぜんぶちがう。
川の水、水道の水、水たまりの水、プールの水。
ぜんぶひんやりしてるけど、ぜんぶちがうきもちがする。
—
水にさわると、また走り出せる
学校でうまくいかなかった日も、水でかおを洗うとなぜかすっきりする。
ちょっと泣いた目も、水でぱしゃってしたらだいぶましになる。
水ってすごいな、とおもう。
ひんやりして、かたちなくて、するって逃げて、でもいつもそこにある。
水に触れると、なんか「よし!」ってなれる。
これ、言葉でうまく説明できないけど、手と足と顔がぜんぶ知ってること。
それで十分な気がする。
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