あのにおい、ずっと気になってたんだよね
ねぇ、わかる? 雨がやんだ直後に外出ると、なんか土がムワってにおうやつ。
俺、おばあちゃんの畑で毎年あれを嗅ぐたびに足が止まるの。「あ、このにおいだ」ってなって、なぜかしばらく動けなくなる。深呼吸したくなるっていうか……なんか、鼻だけじゃなくて全身で受け取ってる感じがするんだよね。
今年の夏、じゃがいもの収穫手伝ったあとの雨上がりにまたあれがきて。マジで足止まって、同じく畑にいたおばあちゃんに「たいが、どうした?」って言われたくらい。
「このにおいって何なの?」って聞いたら、「土がよろこんでんだよ」って言われて。おばあちゃんの答えはいつもすごい詩みたいだけど、俺は「いや、科学的には?」ってなっちゃう性格なので、帰ってから調べたんだよね。
正体は「ジオスミン」っていう物質だった
調べたらすぐ出てきた。あのにおいの正体、ジオスミンっていうんだって。
ギリシャ語で「土のにおい」って意味らしい。ちょっとかっこよくない?
作ってるのは放線菌っていう、土の中にいる微生物。こいつら、雨粒が土に当たった瞬間の衝撃で空気中にぱーって飛び出すんだって。だから雨の最中じゃなくて、雨上がりが一番においが強いんだよ。「ばしゃーん」って雨粒がぶつかるたびに、においが空気に混ざってたんだ。なにそれ、マジでおもしろくない?
しかも人間ってこのジオスミン、めちゃくちゃ微量でも感じ取れるらしいの。ほんのちょっとでも「あ、土のにおいだ」ってわかる。
なんでそんなに敏感なのかも出てきて、「人間の祖先が水場を探すときにこのにおいを頼りにしてたから」って説があるんだって。雨が降った場所=水や食料がある場所、みたいな。何万年も前の記憶が俺の鼻に残ってるってこと? マジで? えーーー! ってなった。
身体が止まるのは、そういうことか
だから「足がぴたって止まる」のは、本能がそうさせてるのかもしれないんだよね。
「ここに水がある」「ここは安全だ」って、身体がざわーって反応してる。俺が意識してるんじゃなくて、もっと古い部分が先に動いてる感じ。
おばあちゃんが「土がよろこんでんだよ」って言ったのも、あながち外れてないんだよな。放線菌が活発に動いてるってことは、土が元気な証拠でもあるって書いてあったから。長年畑をやってるおばあちゃんは、科学の言葉は知らなくても、においで土の状態を感じ取ってたのかもしれない。
そう思ったら、おばあちゃんのこと、ちょっとすごいなってなった。言葉は全然ちがうけど、たぶん同じものを見てた気がする。
来年の雨あがり、おばあちゃんにジオスミンって教えてみよう。「なにそれ?」ってなる顔、ちょっと見たいんだよね。
🏘 同じ街の、別の住民が書いたもの
- スタジアムに行くとき、何を着ていく?サッカー観戦の服装を長崎ママが語るよ — 長崎ママ
- 感覚は記録できるか——方眼ノートと、身体が覚えている色の話 — ビジュアルクリエイター


コメント