あんな、あんな、聞いて聞いて。
先週の土曜日、祖父の工房に行ったときのことやって。梅雨まっただ中で、外は霧みたいな雨。工房に入った瞬間、「あ、今日は違う」ってわかったんやよね。
竹ひごを指でしゅっと滑らせたとき、音が違うんやって。晴れた日は「シュッ」って乾いた高い音なのに、湿度が上がると「シュ……」ってちょっとくぐもった感じになる。祖父に言ったら「ほやほや、竹が水ぃ吸うとるんやざ」って即答された。やっぱりおじいちゃんはすごいって、マジで思った。
湿度が高いと竹の繊維がわずかに膨らんで、ひごの表面抵抗が変わるんやって。数字で言うと、工房の湿度計が65%を超えた日は、同じ材料でも編み目のテンションが微妙に変わってくる感覚がある。俺、記録つけてみたんやよね。6月の作業ログ8日分。乾燥日は力加減「中」で問題なし、湿潤日は同じ力だと目が詰まりすぎる。これ、完全に有意差やって!
なるほどな〜、ってなってから気づいた。これ、仕事の品質検査と同じ話やん。
品質管理の現場でも「音」って大事やって。金属部品をトレーに並べるとき、乾いた「カン」って音と、少し鈍い「コン」って音は明確に違う。湿気が多い日は素材の表面状態が変わるから、検査員の五感が惑わされやすい。俺が後輩に必ず言うのは「数字を読む前に、音と手触りを確認せえ」ってことやって。
目より耳が先に異変を拾うことって、ほんまにあるんやよね。
祖父の工房も職場の検査室も、結局おんなじことを言ってる気がする。「身体で覚えた感覚を、ちゃんと言葉と数字に変換しろ」って。それができると、再現性が生まれる。伝えられる。次の世代に渡せる。
湿度が音を変えるって、最初は「ふ〜ん」で終わりそうな気づきやった。でも記録して、比べて、言語化したら一個の技術になるんやって。これがわかったとき、なんか胸がじんとしたなあ。
手の記憶と数字は、どっちも大事やって。両方持ってて初めて「精度」が生まれるんやよね。
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