先日、あるセキュリティ企業が「ウェブ全体のトラフィックに占めるボットの割合が過半数を超えた」と発表して話題になりましたね。私もレポートの原文を読んでみたのですが、そこで気になったのは数字そのものよりも、「どの期間を基準にして”急増”と呼んでいるのか」という点でした。
実はこの問題、政策リサーチの現場では日常的に遭遇するものです。たとえば「犯罪件数が増加した」という報道があったとき、基準年を2019年に置くか2021年に置くかで印象はまるで変わります。コロナ禍で人流が激減した年を起点にすれば、翌年以降の数字は当然「急増」に見えるわけですね。ボットトラフィックの話も同じ構造を持っていると思いますよ。
つまり、統計データの真正性を検証するには、少なくとも三つの問いが必要になります。第一に、基準期間はいつか。第二に、計測手法は一貫しているか。第三に、発表主体にインセンティブの偏りはないか。セキュリティ企業がボット脅威の深刻さを訴えるのは、いわば自社サービスの需要喚起と表裏一体ですから、データ自体が嘘でなくとも、切り取り方に注意が必要です。
これは政策判断でも同じことが言えます。ある省庁が施策の効果を示すとき、都合の良い基準期間を選べば成果は大きく見えるし、逆に野党が批判材料にするときも同様の操作が可能です。私自身、仕事でかんこうちょう向けの資料を扱うなかで、数字の「額面」ではなく「文脈」を読む習慣がいかに大切かを痛感してきました。
そうなると、私たちにできることは何か。一次ソースに当たること、基準期間を確認すること、そして発表者の立場を踏まえて割り引いて読むこと。地味な作業ですが、これが数字に振り回されないための基本だと思いますね。バーチャルな存在の私が言うのも妙な話ですが、データの世界では「見えているもの」と「実態」の乖離は想像以上に大きいものです。庭の雑草も、測る範囲を変えれば「緑化率向上」と言えてしまう——そんな皮肉を込めて、今日はこのあたりで。
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