はじめに──数字から目を逸らさないために
日本の財政状況について語るとき、「もう何十年も破綻していないのだから大丈夫」という楽観論と、「いつか必ず暴落する」という悲観論が両極端に飛び交いがちです。私自身は、どちらの立場にも与したくないと思っています。大事なのは、データを並べて冷静に現在地を確認することではないでしょうか。今回は主要先進国との比較を軸に、日本の国債リスクと成長戦略の課題について、自分なりの読み筋を整理してみます。
日本の債務残高は「異次元」の水準にある
IMFが公表している2024年10月時点の「World Economic Outlook」データベースによれば、日本の一般政府債務残高の対GDP比は約251.2%と推計されています。これはG7諸国の中で突出した数字です。比較対象として挙げると、アメリカが約121.4%、フランスが約113.8%、イギリスが約101.3%、ドイツが約63.7%といった水準です。日本だけが200%を大きく超えている状況は、もう長く続いています。
ここで「日本国債の大半は国内で消化されているから問題ない」という反論が出るのは承知しています。確かに、日銀が発行済み国債の約5割を保有し、国内金融機関を含めれば9割近くが国内保有という構造は、対外債務中心の国とはリスクの質が異なります。この点は正当な指摘だと思いますよ。ただし、それが「だから安全」という結論に直結するかというと、私はやや慎重です。
金利上昇局面で見えてくるコスト
日銀が2024年にマイナス金利政策を解除し、政策金利の引き上げに踏み切ったことは記憶に新しいですね。財務省の「令和7年度予算政府案」によれば、国債費は約28.2兆円と過去最大規模に膨らんでいます。一般会計歳出総額の約24%が国債の利払いと償還に充てられる計算です。
仮に長期金利が今後さらに1%上昇すれば、利払い費は数兆円単位で増加するという試算を財務省自身が示しています。アメリカでは既にFRBの利上げ局面を経て、連邦政府の純利払い費が国防費を上回る事態に直面しました。日本がこの先同様の圧迫を受けないと言い切れる根拠は、正直なところ見当たりません。
成長戦略なき財政再建は絵に描いた餅
もっとも、「緊縮一辺倒で財政を立て直せ」という議論にも私は懐疑的です。内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」(2025年1月公表)では、成長実現ケースにおいて名目GDP成長率が3%程度で推移すれば、2033年度にプライマリーバランスの黒字が定着するとされています。逆に言えば、成長がなければ分母が膨らまず、債務比率の改善は極めて困難です。
ここで主要国と比較して気になるのは、日本の潜在成長率の低さです。OECDの推計では、日本の潜在成長率は0.5%前後とされ、アメリカの2%前後、ユーロ圏の1%前後と比べても見劣りします。人口減少と高齢化が主因であることは言うまでもありませんが、労働生産性の伸び悩みも大きな要因です。OECD統計で日本の時間あたり労働生産性はG7中最下位が続いています。
つまり、財政再建と経済成長は車の両輪であって、どちらか片方だけでは機能しない。歳出の効率化を進めつつ、規制改革や人的資本投資によって潜在成長率を引き上げる──言葉にすれば当たり前のことですが、この「当たり前」がなかなか実行に移されないのが日本の政策課題の核心だと感じています。
おわりに──危機感は持つ、でも悲観はしない
私の立場を正直に言えば、「日本の財政は楽観できる状態にはないが、手の打ちようがないわけでもない」というものです。国内消化構造や経常収支黒字、対外純資産世界一という強みは確かにある。しかし、それに安住して改革を先送りし続ければ、将来世代への負担はさらに重くなります。中学生の息子の顔を見るたびに、この子たちの時代にどんな財政状況が待っているのか、つい考えてしまいますね。
データを見る限り、時間的猶予はまだあるけれど、無限ではない。その認識を共有するところから議論を始められれば、と思っています。


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