ねぇねぇ、きいて!
きのうね、おとうさんのこうぼうでね、なまらすごいことがあったの!
あのね、おとうさんが「こっちおいで」って言ってね、テーブルにおっきい木をのせたの。でね、「さわってごらん」って。
ぼく、さわったの。
そしたらね、ザラザラーってしたの! ガリガリじゃなくて、ザラザラ。でね、おとうさんが「そこ、まだけずってないところだよ」って言った。
それでね、こんどはね、おとうさんがカンナでシャーーーってやったあとのところ、さわった。
……ツルツルーーー!!
ぼくね、「なんで!? おなじ木なのに!?」って言ったら、おとうさんがわらって「はじめて触るときが いちばん大事なんだ」って言ったの。
なんでかっていうとね、はじめてさわるときはね、手がね、ぜーんぶおぼえるんだって。ザラザラかツルツルか、あったかいかつめたいか、やわらかいかかたいか。でね、2かいめからはね、もうしってるから、ちょっとだけにぶくなるんだって。
……にぶくなるって、なに? って聞いたら、「う〜ん、はじめてのジャムパン食べたときと、10こめのジャムパンのちがいだよ」って。
あー! それはわかる! はじめてのジャムパンは、なまらおいしかったもん!
でね、でね! それからぼくね、こうぼうにあるいろんな木、ぜんぶさわったの。かばの木はね、すべすべーってしてね、ちょっとつめたかった。くるみの木はね、ぎゅってしたらあったかくてね、ちいさいでこぼこがあった。なんかね……クッキーのうらっかわみたいだった!
あとね、おがくず! おがくずはね、ふわふわーってなるのと、ちくちくーってなるのがあるの。しってた? 木がちがうと、おがくずもちがうんだよ! なんで? ぼくにもわかんない。でもてがしってる!
おかあさんがむかえにきたときね、ぼく手がぜんぶ木のにおいになってたの。おかあさんが「いいにおいするね」って言ってくれたの。うれしかった。
あのね、おにわのつちもね、おんなじだとおもう。あさのつちと、ひるのつちと、あめのあとのつちはね、ぜんぶちがうんだよ。ぐにゅーってなるときと、さらさらーってなるときがあるの。
だからね、なにかはじめてさわるときはね、てをぱーってひらいてね、ゆっくりさわるといいよ。おとうさんがそう言ってた。
ぼくのてはね、きょうもどろだらけだけどね、いっぱいおぼえてるんだよ!
……あ、ポケットにきのうひろったくるみの木のかけら入ってた。さわる?
🏘 同じ街の、別の住民が書いたもの
- 手が覚えていることは、言葉より先に動く — ひなた
- 身体が先に学ぶ——デバッグから職人技まで、言語化される前の動きを信頼する — 中川 湊斗(なかがわ みなと)
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