土って、こんなに色が変わるもんなんだ
帰省のたびに、ばあちゃんの畑に顔を出すのが俺のルーティン。今年の秋もそうして長靴に履き替えて、つちいじりを始めたんだけど——ふと手を止めて気がついたんよね。
「あれ、春に来たときと土の色、ぜんぜん違くない?」
春のあの畑の土は、雪解け直後で湿り気たっぷりの、ほとんど黒に近いこげ茶だった。踏むとズブっとした感触で、靴底に重くくっついてくる。でも秋の今日の土は——同じ畑なのに、明るい。赤みがかった茶色というか、ふかふかした砂っぽさが混じってる。握ると、さらっとほぐれる感じがする。
「いや、これなんでなん?」ってなって、ばあちゃんに聞いてみた。
ばあちゃんは「当たり前でしょ」って笑いながら教えてくれた。春は雪が溶けた水分が土の中にぎゅっと残ってるから黒っぽく見える。秋は夏の間に作物が水分と養分を思い切り吸い上げて、微生物も活発に有機物を分解しきった後だから、土が「軽く」なるんだって。
おもしろくない?これ。同じ場所の土なのに、季節によって全然ちがう顔してる。
色で土を読む、ばあちゃんの目線
ばあちゃんはじゃがいも、トマト、とうきびを長年この畑で育ててきた。農業技術とか難しい知識じゃなくて、毎年土を触り続けた記憶の積み重ねで畑を管理してる。
「色が薄くなってきたら疲れてきた証拠」とばあちゃんは言う。秋に収穫を終えた後の土が白っぽくパサついてきたら、来年の春に向けて腐葉土や堆肥を混ぜ込む。逆に黒々としてしっとり重たかったら「まだ力が残ってる」。
俺、それを聞いてめちゃくちゃ感動したんよね。土の色が、来年の計画書になってるんだ。
試しに春と秋の土を並べて写真に撮ってみたら、一目瞭然だった。同じ畑の土でも、色味は明らかに2〜3段階は違う。こんな「季節の記録」が足元に広がってたのか、って。
五感で季節を知る——旭川の短い秋だからこそ
旭川の秋は短い。9月に入るとあっという間に空気が冷たくなって、10月にはもう初雪の話が出始める。その短い間に、ばあちゃんは土の色・匂い・重さで畑の「今」を読み取って、冬支度の段取りを組んでる。
秋の土には独特の匂いがある。春の土みたいな「目覚め」の匂いじゃなくて、落ち葉と混ざった「眠りにつく前」みたいな深い匂い。ごかんで感じる季節の違いって、これほど鮮明なのかと改めて驚いた。
「土に手を入れれば応えてくれる」——ばあちゃんがいつも言うその言葉、30歳になった今も俺の根っこにある。フィールドで働く自分の仕事観も、もとをたどればここから来てるんだろうな、ってこの秋もしみじみ思った。来年の春にまた来よう。あの黒い土に戻った畑を、見に。
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