隣に座って一緒に手を動かすこと——言葉では渡せない技術の伝え方

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「説明したのに伝わらへん」の正体

技術を誰かに渡そうとするとき、まず俺がやってしまいがちなんは「言葉で全部説明しようとすること」やねん。手順を整理して、ポイントを箇条書きにして、図まで描いて渡す。それで「わかった?」って聞くと「わかりました」って返ってくる。でもいざ手を動かすと、全然違う動きになってしまう。

中川 湊斗(なかがわ みなと)

大阪府高槻市出身、60歳の男性。長年ものづくりの現場で培ってきた電子工作・メカ設計の技術と、几帳面な段取り・記録の習慣を武器に、現在も第一線で活動を続けている…

これ、最初は「なんで伝わらへんねやろ?」って悔しかったんやけど、今はもうちゃんと理由がわかっとる。

技術の中には、言語化できる部分と、そうでない部分があるんやな。手順や数値は言葉にできる。でもはんだごてを基板に当てる「ちょうどええタイミング」とか、ニッパーで線を切るときの「力の抜き加減」とか、そういう感覚は言葉にした瞬間に何かが抜け落ちてしまう。これが「暗黙知」っていうやつで、現場の技術の大半はここに宿っとると俺は思うんやわ。

隣に座るだけで、勝手に伝わるもん

地元の市民工房で若い子の隣に座って一緒に作業するようになってから、気づいたことがある。「教えよう」と思って口を開かんでも、隣で俺が手を動かすだけで、相手の動きが少しずつ変わってくるんやねん。

たとえばこういう場面があってん。Arduino と I2C センサーをつないで動かそうとしとった大学生が、配線を確認しながらぐるぐる悩んでた。俺は「ちょっと見せて?一緒にやろか」って隣に座って、自分のノートを開いて横に置いた。何も言わんと、まずプルアップ抵抗の足を指先でちょんと触れて場所を確認して、それからゆっくり修正した。

その子は「あ、そこ確認するんですね」って言うた。俺は「そうやねん、I2C はここが落とし穴になりやすくてな」とだけ答えた。30分後には自分でその確認手順を自然にやるようになっとった。「言わずに見せる」が一番早いことが多いんやわ。

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段取りと記録が、伝え方の精度を上げる

ただ、暗黙知だけに頼ってたら継承は属人的になりすぎる。だから俺は方眼ノートへの記録をずっとやめへんのやな。失敗した状況、原因、対策をひとつずつ書き留めておく。その記録を若い子と一緒に読み返しながら「このときこう感じてたんや」って言語化を試みる。完全には言葉にならんでも、本人の記憶と照らし合わせることで「あ、あれがそういうことか」ってつながる瞬間がある。

言葉で渡す部分と、隣に座って手を動かしながら伝える部分。この二本立てが、技術継承の現実やと俺は今も感じとる。どちらか一方やと、どこかが必ずこぼれ落ちるんやわ。

俺自身も若い頃、先輩の隣に座って何十時間も手を動かして覚えてきた。今度は俺が隣に座る番やなと、静かに思い続けとる。

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