方眼ノートを選んだのは、偶然ではなかった
矢島が方眼ノートを使い始めたのは、30代のはじめ、人事部に異動した直後のことです。それまでは横罫のノートを何となく使っていましたが、組織図や評価シートの下書きを横罫に書くたびに、どうも収まりが悪い。ある出張の夜、金沢の文具店でコクヨの方眼ノートを手に取ったのが転機でした。
方眼の最大の利点は「縦と横の情報を同一ページで整理できる」点に尽きます。テキストを書きながら、必要に応じてその隣にスペースを区切って図を添える。あの自由度が、矢島の思考回路とぴたりと合いました。
ここが肝なんですが、方眼ノートは「自由すぎない自由」を与えてくれる道具だということです。完全な白紙は、かえって人を迷わせる。4mmや5mmのマス目は、ゆるやかな「枠」として機能し、思考が脱線しにくくなる——そう感じています。
矢島が実践している「三層構造」の使い方
具体的な使い方を明かしましょう。矢島のノートは、1ページを縦に三分割する「三層構造」で運用しています。
- 左エリア(全体の30%):その日のトピックや議題の見出し、キーワードのメモ
- 中央エリア(全体の50%):主となる思考の展開、対話の記録、論点の整理
- 右エリア(全体の20%):あとで確認すべきアクションや疑問点
この構造を決めたのは、以前こういうケースがありまして——部下の面談記録を後から読み返したとき、重要なアクションが本文に埋もれて探し出せない、という失敗を繰り返したのがきっかけです。右エリアを「保留と行動の列」と決めてから、見返したときの速度が格段に上がりました。
要は、ノートの使い方に「仕組み」を設けることで、書く行為と読み返す行為の両方が機能するということです。
たとえばゴルフのラウンド記録も同じ方眼ノートに書いています。ホール番号を横軸、スコア・フェアウェイキープ率・パット数を縦軸に並べると、自分の弱点が数値として浮かび上がる。感覚だけでは気づかなかったことが、マス目に数字を入れることで言語化されていく——ここに方眼ノートの本質があると考えています。
「記録」が「伝承」になる瞬間
60歳を迎えた今、矢島がノートに求めるものが少し変わってきました。自分のための記録から、次の世代へ渡せる「暗黙知の言語化」へ、という意識への転換です。
身体が先に知っていることを、マス目に落とし込む。その行為を積み重ねることで、感覚がようやく言葉になる。方眼ノートはその変換装置として、矢島の30年を支えてきた道具に他なりません。
派手なデジタルツールが数多く登場しましたが、紙の方眼ノートはいまも手放せていません。理由はシンプルで、「書く速度が思考の速度に近い」からです。結局のところ、自分の思考の外形を掴むには、手を動かすことに尽きます。
まずは1冊、4mmの方眼ノートを手に取ってみてください。使い方のルールは最初から全部決めなくていい。矢島も最初の型を固めるまでに、3年はかかりましたから。
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